1990 年代以降の日本において、文化遺産をめぐる制度の創 出や変容の背景には、その「保存」の意味内容を、凍結的な 保存から活用を含むものへと転換させる意図があったとされ る 。1996 年の文化財保護法改正による登録有形文化財制度 の運用開始や、2007 年と 2008 年の「近代化産業遺産」選定、 2015 年から選定が開始された日本遺産などは、すべて対象と なる遺産を保存しながら地域活性化を目指すという点で共通し ている 。特に、人口減少や産業構造の転換に苦慮する地方に おいては、地域固有の文化遺産は経済的、文化的に大きな価値 を有すると考えられてきた 。
本研究会では、保存・活用されるようになった近代化産業遺 産に着目する。かつては産業基盤として街を活性化していたこ れらの建築物は、社会的動向により利用されなくなり廃墟と なった、または、あまり利用されなくなり廃墟化が進んでいた が、歴史的価値を見出されるようになり、保存・活用が活発化 していった。このように、近代化産業遺産が保存・活用される ようになった経緯を分析すると共に、これらの遺産が都市の一 部としてどのように再び機能が再生し、地域活性化に繋がった のかを考察する。
●ゼミ構成員(敬称略)
修士二年 :杉本功太、水野結唯
修士一年 :小林創(研究会長)、森田錬
学部四年 :廿樂栞名、永尾美沙