コンペ研究会 2020

現在まで土地や技術、工法などの多様な歴史の蓄積が組み合わされ、応用される事で建築は発展してきた。同時に、古代から脈々と「建築」は宗教や権力(者)や社会動向と密接に関係しながらその様相を変化させてきた。
私たちは、建築設計理論と設計手法の追求を目的として、近代の建築に於いて「コンペ形式」によって実現された作品の計画、設計図書等の文献研究を行うと同時に、現地調査による実体験を通じて実践的な考察を行う。
また、これら一年間の諸活動を総括した具体的な成果として、広く国内外開かれたコンペティションの自主的な共同参加による計画案へと総合的に反映させる。

近世では、ブルネレスキによってサンタマリアデルフィオーレ大聖堂のドームをはじめとし、多くの建築が「設計競技形式」によって実現された。昨今では、新国立競技場計画が社会を席巻し、様々な視点からの論争が繰り広げられた。新国立に求められたのは復興的シンボル性であり、土地の文脈理解であり、コストであり、工期であった。計画が白紙に戻されてからは、コンペというよりも「指名制」に近い状況にもあったが、もやは競技場が完成してしまえばその過程は忘却されるだろう。
こうしたところに「コンペ形式」の深みが現れているように思う。一つのコンペによる作品を凝視する中で、コンペにおける最終案数点と、一位に選ばれた作品との差はなんだったか、当時「建築」に求められていたものは何だったのだろうか、といった事に、、、
そこで私たちは、コンペ形式によって実現された建築が完成するまでの足跡を辿ることで、その建築の成立した社会背景や当時の建築観、設計の過程を学ぶことはできないかと考えた。

●ゼミ構成員(敬称略)
修士二年  :海津隼人、呂震楠
修士一年  :杉本功太、山下耕生(研究会長)