近年の建築史研究室
早稲田大学建築史研究室は昭和初期の発足以来、二教授一研究室体制で活動を続けている。現在の指導教員は中川武名誉教授および小岩正樹准教授、中谷礼仁教授である。研究室は、教員・助手2名・博士後期課程生約5-10名・修士課程生約30名・卒論生約20名からなり、共同で発表会を行うと同時に、各人のテーマに沿った研究会を組織してさまざまな研究を展開している。
本研究室はこれまで田辺泰-渡辺保忠-中川武と、日本建築史の先端的研究を先導し、また70年代からは古代エジプト、80年代に入ってからは南アジアと日本建築史との対比を視座として海外への展開を行ってきた。大学院生を中心としたゼミ活動は活発で、現在は日本建築史、日本近代建築史、西洋建築史、アジア建築史、古代エジプト建築史の各分野で、さらにテーマごとの研究会を組織し、海外調査を含む多くの研究活動を行っている。
建築史研究と保存修復は常に表裏の関係にあり、歴代教授も各地方自治体と協力して古社寺の修復活動に携わると同時に、洋式建築の設計を手掛けている。日本における建築史は、もともと古社寺の保存のための調査研究に端を発しているが、90年代に入り再び「保存と再生」が建築界全体のテーマとして浮上してきた。
これまでの研究活動に関連して、アジア地域の歴史的建造物の保存修復問題にも積極的に関与し、中川は1991年にユネスコの技術指導員としてヴィエトナム・フエを訪問、1994年からは日本国政府アンコール遺跡救済チーム団長として、カンボジア・アンコール遺跡の修復活動を指揮している。またヴィエトナム・フエ、カンボジア・サンボーにおいても現地の文化財 行政関係者と共同して遺跡の調査活動および修復計画の立案に当たっている。
学生は修士課程修了後、多くが建設会社、組織設計事務所、個人設計事務所、コンサルティング業界、住宅産業、文化財保存関係などに就職している。またこの数年は博士後期課程への進学者が増えている。